こんにちは、ハルです。
「みんなの日本語」を使って授業をしている日本語教師のみなさん。
会話練習はどのようにしていますか。
・みんなの日本語の会話練習の進め方がよく分からない
・ただ会話文を読ませて発表するしかできない
・もっと楽しい練習方法が知りたい
よく聞くお悩みです。
会話練習のコツは目的をしっかり理解すること!
現役日本語教師の私が例題を使って、ズバリお悩みを解決します。
これを読めば、会話練習のやり方が変わり、教室活動をブラッシュアップすることができます。
会話練習の目的を知る
会話練習の目標は、その課のタスクを達成することです。
つまり、タスクが「依頼」なら、学習項目の文型を使って相手に失礼がないようにお願いすることができるようにならなければなりません。
会話文には課ごとに目標があるので、先ずはこの課で何ができるようにならなければならないか、理解する必要があります。
みんなの日本語「教え方の手引き」には目標が書かれているので参考にするといいでしょう。
例えば、28課の会話「出張も多いし、試験もあるし…」では、会話の目標が「頼まれたことに対して、理由を述べて断れる。」になっています。
ですから、タスクは「断る」なのですが、日常生活の中で断る場面があったとき、NOと言えばいいかというとそうではなく、相手との関係を考え上手に断る必要があります。
また、断る言い回しをマスターすればいいかというとそうではありません。
何故なら、会話には流れがあるからです。
会っていきなりお願いをしてくる人はいません。
本題に入る前に開始の部分があるのが普通です。
この会話の流れを理解し、相手との関係を考慮した断り方ができて初めて目標達成となります。
つまり、会話練習の目的は、日常生活で使える会話の練習をすることです。
では、どのように授業を進めていくか詳しく見ていきましょう。
1.導入
DVD視聴
先ずテキストは開かず会話文を聞かせます。
DVDの視聴ができれば見せると状況が分かりやすいです。
このDVDは日本人が見ると昭和臭のする映像ですが学習者にはウケがいいです。
2回視聴します。
DVDがない場合はCDを聞かせますが、音だけでは場面状況が分かりにくいので絵カードを用意して見せるといいでしょう。
「教え方の手引き」についているCD‐ROMにイラスト集があります。
内容理解のQA
視聴後先ずすることは内容を理解しているかQAをすることです。
②場面(場所)
③状況
④目的
この4つの質問をしていきます。
①の質問はだれとだれの会話か?
敬語をつかっていたら上下関係であるし、普通体なら友人であることが分かります。
②の質問はどこでの会話なのか?
会社なのか、道なのか?
また、はじめから一緒なのか、偶然会ったのか?
③の質問はどんな状況なのか?
それがわかったのはどの文か?
④の質問は何をしたいか?
誘いたいのか、許可が欲しいのか?
QAをすることによって、場面状況を理解し、会話の目標が何かを気づかせます。
音読
先ずは一文ずつ音読します
T→SS
役割を分担し音読(交代して)
2.部分練習
音読が終わったらいよいよ目標達成に向けての練習です。
先ほどの28課を例にすると、目標は「頼まれたことに対して、理由を述べて断れる。」です。
先ず本文の中から断るのに必要だと思う文を見つけさせます。
私は分かりやすくするために一文ずつに番号を振り、断るときに必要と思う文を言ってもらいます。
断っている文は⑪⑬⑮とわかります。
さらに、「うーん、ちょっと仕事があるし…」の「うーん」の言い方や言葉に込められている気持ち。
「・・・」にはどんな言葉が省略されているか?
その気持ちを表すにはどのような声のトーンがいいか?考えてもらいます。
この課では「・・・」がたくさん出てきます。
日本人は「はっきりNO]と言わず、文末を濁すことで相手を傷つけないようにする気持ちを含めることを教えます。
さらに、この課の目標ではありませんが、お願いするときに必要な文も考えてもらいます。
①③⑨は出てきますが⑫「お暇なとき、お茶でも飲みながら…」の「・・・」にお願いの気持ちが省略されていることに気付かないと出てきません。
また①の「ちょっとお願いがあるんですが。」の開始文の重要性も伝えます。
例えば、先生に作文の添削を見てもらいたいとき、職員室に行っていきなり「先生、作文の添削をしてください。」というのではなく、「先生、今お時間ありますか?」や「今話してもいいですか。」と言って本題に入るのではどちらがいいか考えてもらいます。
ですから、この会話文で「ちょっとお願いがあるんですが。」はとても大切な一文であることを教えます。
また、開始文と同じくらい大事なのが終結文です。
ここでは⑭「そうですか」の文に「わかりました。諦めます。」の気持ちが入っており、⑮「すみません。」には「時間がなくてごめんなさい」の気持ちが入っていることを理解させます。
このように終わることで二人の関係が崩れることなく済みます。
先ほどの職員室の例ならば、最後に「先生ありがとうございました。」や「お願いします。」がいることも併せて教えます。
会話には流れがあり、開始文→本題→終結文の順番で話すことを練習していきましょう。
3. ペア練習
お願いするときに必要な言い方と断るときに必要な言い回しが分かったところで、それを練習します。
その際、身近なお題を与えることがポイントです。
そうでなければ使える会話練習ができません。
例えば、チケットが二枚あります。
Bさんは相手に嫌な気持ちにさせないように上手に断ります。
学習した、「うーん」や「ちょと用事が…」や。
「~し、~し」など学習項目を使って断ることができれば成功です。
誘う方も開始文から始まり、既習文型を使って頑張って誘います。
最後は終結文で終わります。
数名に発表してもらうと盛り上がりますし、びっくりするくらい上手に会話を展開させていくこともあります。
最後に今日の目標をもう一度確認し、本文の会話文を読んで終わります。
時間があればディクテーションをするのも効果的です。
まとめ
会話練習の目的は日常生活で使えるやりとりのし方を覚えることです。
それはフレーズであったり、流れだったり。
役に立つことを教えなければ学習者の心に響きません。
また、声のトーンや、ポーズの取り方など会話の目標によって変わってきます。
その課の目標をしっかり理解し、どのような練習をしたら日常生活ですぐに使える会話練習になるか考えることが大切です。
みなさんの授業がブラッシュアップしますように。
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